今回は日々の診療でよくご質問のある指しゃぶりについて少しご説明させていただきます。
「指しゃぶりはほっといていいのでしょうか?」と良く聞かれますが、それは年齢(発達の度合い)によりアドバイスは変わります。
そもそも指しゃぶりとはなぜ起こるのでしょうか?
下の写真をご覧ください。
こちらの写真は赤ちゃんの指しゃぶりの写真ですが、実はお腹の中です。赤ちゃんはお腹の中でも指しゃぶりをしている場合があります。
生まれたてなのに親指に吸いダコのあるお子様もいらっしゃるみたいです。
つまり人間は生まれる前から何かを吸うということがプログラムされているのです。
当然赤ちゃんが生まれて最初に口に入れるのはおっぱいなのでお腹の中で吸啜(おっぱいを吸う)準備をしているのです。
またお口という器官は赤ちゃんが初期の段階で持つ感覚器です。
お口からの刺激を通して様々な情報をキャッチします。
よって外界の情報を獲得するために赤ちゃんはお口の近くにあるものをすべて口に入れようとします。
そしていつも手元にあるものが指なのです。
よってお子様の感覚器官が発達していない時期の指しゃぶりはそのまま様子を見ましょう。
次に赤ちゃんの感覚器官(視覚、聴覚、嗅覚、お口以外の触覚)が発達してくるとお口以外でも情報をキャッチすることが次第に出来てきます。
一般的にハイハイやヨチヨチ歩きを始め、自分の周囲のものに興味を持ち始めた頃からだんだん指しゃぶりは減り始めます。
当然発達には個人差がありますので一概に年齢で指しゃぶりをやめるタイミングは決められませんが、大体1歳くらいの段階で指しゃぶりの役割はもうなくなっている場合多いです。
それ以降にももちろん指しゃぶりをされるお子様はいらっしゃいます。
参考として指しゃぶりの頻度について東京都の調査によりますと
1歳2ヶ月 28.5%
1歳6ヶ月 28.9%
2歳0ヶ月 21.6%
3歳0ヶ月 20.9%
というデータがあります。3歳でも20%のお子様が指しゃぶりをしているみたいですね。
このデータを見ると1歳から3歳までの減少度合いがかなり緩やかなので1歳までにやめることができないお子様はそのまま指しゃぶりを続けてしまうことが多いことが考えられます。
なぜでしょうか?
それは指しゃぶりというものが乳児期(1歳まで)の情報獲得の役割とは違った役割が出てきていることが考えられます。
その原因としては心理的な要因がよく挙げられます。
1人っ子のお子様や周囲の友達と協調するのが難しいお子様に多いと言われています。
何かを指しゃぶりで補っている可能性が高いので、なぜ指しゃぶりに興味が留まっているのかを考えていかないといけません。
ここまでが指しゃぶりの原因と傾向ですが、次に指しゃぶりがどのような弊害をもたらすのでしょうか?
以下に問題点を挙げます。
①出っ歯(上顎前突)や開口(前歯が噛まない)、交叉咬合(歯並びがずれる)などが起こる
常に親指が前歯に挟まっているので上の歯が前に押されて出っ歯になることが多いです。また指の挟み方によっては顎の位置がずれる場合もあります。
②口呼吸
先ほどのかみ合わせの異常が起こると唇を閉じることが困難になり口呼吸となる場合があります。
③構音障害
かみ合わせの異常により舌をうまく歯に当てることができず結果的に構音障害が発生する場合があります。
④舌癖
指しゃぶりによってできた前歯の隙間に舌を挟み込む癖が発生する場合があります。それによってさらに歯並びは悪化します。
このような問題が発生するため指しゃぶりはいずれはやめないといけません。
最後にやめさせる方法ですが、悩まれているご両親はネットなどで色々お調べになっているかと思いますが、残念ながらこれといった解決方法は今の所ありません。
それは心理的に依存していることが多いからです。
お子様がご自身で指しゃぶりはやめた方がいいということに少しずつ気づいてもらうことが必要です。
怒って無理やりやめさせるのではなく、他のことに興味が移るようにうまく誘導することが重要になってきます。
また口から指が離れていることを褒めてあげることも忘れずにしましょう。
もし5歳になっても指しゃぶりが治らないようであれば大きく依存している可能性が高いので将来的なお口の機能異常を防ぐために場合によっては強制的にやめさせる必要があります。
その場合は歯科医院で装置を作ることが可能です。
こういった見た目の装置を装着することで指しゃぶりができなくなります。もちろんここまではあまりしたくはありませんが、指しゃぶりが深刻なお子様は一度ご相談ください 🙂
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